xalbebna lojban(酔いどれロジバン)
まえがき
この「酔いどれロジバン」は、「居酒屋でカウンターの隣の酔っぱらいのおっちゃんがいきなりロジバンについて教えてきたら嫌すぎるけど笑えるな」と思って勢い に任せてえっちらおっちら書いたものです。
未完成ですが、初歩の初歩くらいは分かるようになるかもしれません…?
ツイッターに書いていたので、1セリフだいたい140文字くらいです。
個人的には「ドット絵のRPGかなんかに出てくる居酒屋・バーにいるモブのおっさんに会話ボタン連打してる感じ」です。
本編
「こまけぇこたぁいいんだよ、新しい言葉ってのはおもしれえぞ?な?世界がぁ、広がるってもんだ。
だからほら、おめえ、ペンと紙持ってるか?学生だろぉ?ほら、出せってえ」
「基本だ、基本。文字ってのは基本だよ、声に出して読んでみれ。pa re ci vo mu xa ze bi so… xはなぁ、チョットむずいんだ。
ドイツ語分かるか?わかんねえか、ナンコーガイマサツ音っつうンだが、おっちゃん今酔ってるだろ?この発音したら吐いちまう」
「ワハハ、そんなこたどうでもいいな。ほら、読んでみれ。…ほお、なかなか筋がいいじゃあないか。あれ?俺ぁおめに文字の読み方教えたっけ?
…まあ読めてるンだからいいじゃあないか!読めるだろぅ?そう、読めるんだよ、大体ローマ字だから!アハハ。」
「o’i mu xagji sofybakni cu zvati le purdi って読んでみれ。…ンん?アポストロヒー?これはエッチの発音だよう、ハヒフヘホ。
だから、o’iはオヒだよ。簡単だろ?…y?これァ、曖昧母音ってやつだよ。わかんねって?スマホあんだろ?スマホ」
「テキトーにァとェの間くれえの発音だよ、曖昧な母音なんだからぁね。ほらもう読めるじゃねえか。筋がいい、おんめは筋がいいぞ。
あとな、tsani tutci cadzu djica って読んでみれ。わからん?tsはツ、tcはチ、cはシャ、dzはヅ、djはヂだんよ。わかるだろ?」
「ほら、最後だよ。ia do xendo i .ui mi pendo do 読んでみれ。…そうじゃねんだ。イアでなくてな、ヤなんだわ。なんでかって?
おめ、イァって言ってみ?ヤっぽいだろ?だからぁよ。uiもそうさな。ウイじゃなくて、ウィだな。まあ、読めるだろぉ?」
「ン?なんて意味かって?ンフフ、『あなたはきっと親切だ。私はあなたと友達で嬉しい』ってトコだなぁ。フヘヘ、え?変なことを言わせンなって?
へへへへ、いいじゃあないか。どれ好きなもん頼め、一杯だけだぞ、一杯だけ。そりゃあ発音だもの、一杯くらいの努力さ。でも筋はイイね、うん..zZ」
「おう、兄ちゃん、文ってのはあ、なンだ?好きな女いるか?好きだっていうだろォ?えェ?言う度胸がねえだ?こまけえこたぁいいんだ。
なんにしろ、おめえは自分がその子のこと好きだって、きちんと言葉にして伝えなきゃなんねえだろ?おめえさんと、その子の間に片想いの関係があるってコトをヨー」
「なんならオレが言ってやろうか?『アイツはお前さんのことが好きだ』って。ヘヘヘ、余計なお世話だなァ。いや、いいんだ。
オレが言いたいのはな、文ってのは、「何が何とドウであるか」ってのを伝える手段なんさ。お前があの子のことを好きだ、トカ。だろぅ?愛の言葉だって、そうだヨォ。」
「他にもよ、『俺がお前に話しかける』ってのもソウだな?文ってのはやっぱり、何が何と、何を、何にドウであるかってのを言うんだなァ。
うん、うん。おめもそう思うだろ?えぇ?当たり前のことだって?…そうサな、アタリマエかもしんねえなあ。でもよ、当たり前なことほど大事だと思うんさ」
「俺とお前ってのも大事だが、うん、やっぱり大事なのは『~だ』っつう部分だよ。『話しかける』を間違えて『愛する』にしたら、ドエライことになるしなァ。
そうダナア、適当に「デアル句」とでも言うかァ。「~である」を表すから、デアル句。ダジャレだ?いいんだよ、オレはおっさんなんだから。」
「そうなると…うゥん、「オレ」とか「オマエ」とか「その子」とかにもなんか言葉が欲しいなァ。モノコト句とかどうだ、安直だって?
分かりやすいほうがいいだろう?それにほら、もう覚えたろ?モノコト句とデアル句だよ。フヘヘ、センスあるだろ?」
「これ読んでみれ。mi prami do。おめ、発音うめえなあ。誰かから習ったんか?オレが教えたって?アハ、ハ。pramiはなあ、「愛する」って意味だ。
デアル句だよ。miとdoは「私」と「あなた」、モノコト句さね。大体分かんだろォ?「私はあなたを愛する」だ。アイラビューだ、ヘヘ」
「実はなぁ、この言語おもれえんだぞ。 mi do prami もおんなじ意味になんだわ。マ、でもふつうはモノコト句1つ、デアル句1つ、モノコト句いくつかって順番だね。
だから、mi prami do. 分かりやすいだろ? 物事てのは、シンプルイズベストだよ。うん、うん。」
「英語はやったことあんだろ?主語とか目的語とか補語とかあったなァ。あれ、面倒だよなァ?この言語はいいぞォ、そんなこと考えなくたって、イイんだ。
辞書にゼェんぶ、書いてんだ。pramiなら、「x_1はx_2を愛する」ってな。xってナンだって?モノコト句が入るんだヨォ、分かるだろ?」
「miとdoを横に並べただろォ?1番とか2番とかってのはそういうことだべ。言った順、書いた順に入るんだよう。
miって言ってpramiって言って、それからdoって言ったらな、pramiのx_1にmiが入って、x_2にdoが入るんだ。だから、アイラビュー。簡単だろ?」
「じゃあ読んでみれ。do prami mi。なんて意味だ、言ってみれ。…そうそう、そうだよ!やっぱりオメ、筋がいいぞォ。
そう、「あなたは私を愛する」だなァ。入れ替えただけだもんなァ、フヘヘ。 zo’eってのはな、「何かしらのもの」っていうモノコト句だヨ。サムシングだァ。」
「zo’e prami zo’e…「何かは何かを愛する」だよ。平和だナァ。世界は愛で溢れていて欲しいよなァ…。オメの好きな子はどんな子だ?
聞かせておくれよ、オレは寂しいんだ、せめてもの慰みにdoの恋愛話で気を紛らわせておくれや。酒がいるか?頼もうじゃあないか!おォい…」
「んン?もっとデアル句を教えろって?あンなァ、オレは正論を言うぞ、オレは今酔ってイルぞ。酔っぱらいの言うことをサ、聞いちゃあいけない。
エ?今までの話?あれはァ、真実だ。オレは嘘は言わねェからな。酔っぱらいでも真実の一つくらいは…アレ?オレは酔ってねェぞ?酔って…zZZ」
―― 仕方がないので、いくらかあの「デアル句」というのを調べてみることにした。一応、pramiを調べてみると、
確かに「x_1 は x_2 を愛する/にたいして愛情が湧く」と書いてあった。
(http://guskant.github.io/lojbo/gismu-cmavo/jpn-gimste.html)
talkとかはどうだろう。なるほど、tavlaと言うらしい。「x_1 (者)は x_2 (者)に x_3 (題目)について x_4 (言語)で話す/語る」だそうだ。
あの人のことを信じてみれば、「私はあなたに話す」は「mi tavla do」だろうか。
tavlaはx_4まであるんだな。ううん。x_3には「好きな子」とか、x_4は「日本語」とか? もし、x_3, x_4について何も言わなかったらどうなるんだろう。
でも、zo’eが「何か」だったから、これをとりあえず入れておけばいいのか。mi tavla do zo’e zo’e うん。
そんなこんなで、ninmu「x_1 は女(の人)」とかnanmu「x_1 は男(の人)」とか、pinxe「x_1 は x_2 (液体)を x_3 (容器/起源)から飲む」とかを見つけた。
…「僕はあの女の人が好きだ」は何て言うんだろう。なんて。
「オウ、親友。待ってたヨ。オメはあんまり酒が好きくないのか?全然来やしない。…え?オレは、酒が好きだからよォ。
いや、女も好きだけど、フヘヘ。…なんだっけ、そうだよ、オメを待ってたんだヨ。ちゃんと宿題やったか?え?そんなもん出してなかった?…出してなかったナァ!アハハ」
「オレはオメを見込んでいるのサ!オレって結構厳しいンだが、どうもオマエは飲み込みが早えな、叱る暇もねエや、アハ、ハ。
あの言語の続き?アンタも好きねえ、って、古いか、アハハ。今日はナ、オマエが来てくれて、嬉しいンだ。ヘヘ」
「ほれ、見てみろ。今からオレはこのジョッキのビールをグイと飲むぞ。ゴク、ゴク、ゴク。プハ、どうだ、オマエもやってみれ。
イヤ、やっぱいいヤ。そんなことより、オレは今ビールを飲んだろ?だから、mi pinxe lo birje kuってオレは言う。」
「pinxeは、…お?調べた?コイツは秀才だ!大将!生中もう一杯!ってオレのんだけど、ヒヒ。
そうそう、「x_1 は x_2 (液体)を x_3 (容器/起源)から飲む」だよ。lo birje kuは「ビール」だから、「オレはビールを飲む」だ。簡単だなァ!秀才!」
「ん?birjeは「x_1 は x_2 (起源)の発泡酒/ビール/エール」っていうデアル句だって?
あぁ、つまりオメは、なんで lo birje kuがモノコト句として使えるかが聞きたいのか?鋭いねェ。ゆとりってのはオレより勉強できるヨナァ。」
「オ、おかわりが来たゾ。ti は「これ」な。だから、ti birje で「これはビールだ」だな。うん、確かにこれはビールだな。美味いビールだ。
loとkuでデアル句を挟んでるだろ?そうするとな、そのデアル句のx_1なモノコト句になるんだヨ。大丈夫、酔っぱらいでも理解できんだから。」
「道理ってのはいつだってシンプルなもんだよ。ti birje ってのは、「これ」がbirjeのx_1に入りマスって言ってんだろ?
birjeのx_1にはビールが入る。分かるだろ?だから、lo birje ku ってのは birjeのx_1、すなわち、オホン、ビールだわな。」
「nanmuとかninmuとか…おお、やっぱり調べてたか。ninmuは「x_1 は女(の人)」で、nanmuは「x_1 は男(の人)」だったろ。
ダカラ、lo ninmu kuとlo nanmu kuはそれぞれ、「女」と「男」ってわけよ。ドウってことないだろ?」
「lo nanmu ku prami lo ninmu ku … 「男は女を愛する」。ウゥン、真理だなァ。世界はこのために動いてるってぇ言っても過言じゃあないかもしれんな。
うん、うん。オメも早いとこ告白すれ。おうよ、男だろう?当たって砕けろイ。オレぁ、応援してるゼ。親友。」
「オレぁ、酒と女が好きだかんネ、mi nelci lo jikru ku jo’u lo ninmu ku だね。nelciは、分かるだろ?
「好き」さ。「x_1 は x_2 (物/事)を好む」、jikruは酒。jo’uは、聞かなくたって、接続詞だよ。ANDさ、アーンドゥ。」
「ウン、もし特定のソイツを指したかったら、leとkuで囲みな。オメ、これとかあれ、とか、指を使って指すだろ?おんなじように、頭ん中でソイツを指してみ。
指せるだろ、そんときにleとkuを使うんだ。ほれ、mi prami le ninmu ku だ。言ってみ、フヘヘ」
「時間は過ぎていくゼ。ほら、もうこんな時間ダヨ。オメえと話すと早えなぁ、ホント。楽しいモンだ。そういや、なんにも無くてツマラナイって、大将に愚痴ってたなァ?
退屈かもしれンが、ツマラナイって平和ってことだぜ。幸せじゃアねえか。なア?大将?なんか飲むか?カルアミルク?バカ言えよ」
「オレはそろそろ帰るよ。clivaは「x_1 は x_2 から x_3 (経路)によって離れる」だな。mi cliva サ。え?x_3?何も無いときはzo’eがいるのさ。
「何か」がね。何にもないなんてコタァないのさ。オメにも分かるさ。見えないものに度々救われるんだよ。ウン…」
「そうイヤ、mi prami は「私は愛する」だよな。チョットした復習。でも、prami mi はナ、違うんだよ。
これはな、デアル句の前がガラ空きだろ?こんなときはな、x_1にzo’eがくるんだ。また見えないやつダヨ。まったく。優しいもんだよナア。姿もねえのに…zZZ」
「ヨーゥ。親友。ジェネレイションギャップな我が親友!アハハ。スマンな、ちょっと風邪で寝込んでタ。最近は、結構ここに来てるって、大将が。
オレに会いに来てたノカ?そういやァ、カルアミルクって、チョット甘いが、うめえなア。辛い酒も美味いが、ああいうのもいいもンだ。まあ、食えよ。」
「「食う」はcitka。「x_1 は x_2 を食べる」。ko citka ti。koは新しいだろ?命令してんだ。koとdoって似てるだろ?
doをkoに変えたら、命令になるワケ。「これを食え」ってな。ko citka ti .i ti finpe。finpeは「魚だ」さ。」
「律儀だなァ。finpeは「x_1 は x_2 (種類)の魚」だよ。その通りさ。そういやァ、文を続けて言うときは、.i って言うんだ。
ピリオドは、小休止、ちょっと休めってこった。そんな急ぐな、人生長いだろ?ゆっくり聞いてやるからヨ。母音で始まる語は一旦休め。母の前では一服さ。」
「お前はコレ好きか?オレの好物なんだが。xu do nelci ti ダナァ。英語って、質問となるとまたイチイチ面倒だよなあ!でもコッチは簡単。
xu を付けりゃあいいんだ。「オメはこれが好きか?」だ。イエスなら go’i 、ノーなら na go’i だ。」
「オウオウ、go’i か。世代は違っても、味覚はオンナジだなぁ、ヘヘ。ときに大将、ti finpe ma、「これは何の種類の魚だ?」てね。
マァ、maはマサシク「何」さ。「これ 魚 何」ってことだね。シンプルだろ?道理ってのはこうでなくちゃア、頭はもっと他に使うべきナンダヨ。」
「ンデ、なんだって?大将。ヒラメ?ハハァ、あの平べったい。コリっとした鯛みたいで美味えヨナァ。紅葉おろしのポン酢がまたいいんだ。
大将はこの店をやるために生まれてきたようなもんサな。アハハ。ほれ、オメ、ti finpe ma からの la .xiramen. だよ。」
「ピリオド2つで挟んでるの、読んでみ。まんま「ヒラメ」だな。でも、ちゃんと読んでみ、「ヒラメン」だろ。イケメンじゃねえゾ、アハハ。
これァ、名前だな。名前は、絶対子音で終わらねえといけねンだ。だから、nをつけた。なんでもいい、sでもいンだが、なんでもいいんだから n でいいだろ?」
「ほんで、名前には la をつける。だから、ヒラメは la .xiramen. なンサ。大将、名前はなんてったっけ。タカシか。なら、la .takacin. ダナ。
la .takacin. cu jukpa lo kukte ヘヘ。大将、もっと美味いもん頼むよ。」
「jukpaは「x_1 は x_2 (完成品)に x_3 (方法)で料理する」、kukteは「x_1 は x_2 にとっておいしい/美味」。
だからヨ、「タカシは美味いもんをつくる」てね、ヘヘ。ン、cu はな、デアル句の前に置くのさ。おまじない。先達はあらまほしきことなり、ってね。」
「おまじないだとか、お守りってのは、中を見ちゃいけねンだ。大人になったら、意味が分かるだろ?そのときまで待つのさ。
マ、調べりゃ出るさ。やっぱ美味えなぁ。ti kukte mi だ。ウゥン…ちょいとビールを飲み過ぎた。便所行ってくラァ。」
…….
「しかしまぁ、歳取ると、ろくなことがない。筋肉も衰えちまうから、逆立ちができなくなる。逆立ちはァ、面白いよな。なんせ、足元に空がくるんだ。
ちょっとひっくり返すだけで、世界がまるで変わるもんよ。オメはまだ若いだろ、逆立ちできるか?できない?ヒョロいもんなあ、確かに。」
「何事もなァ、色んな視点から見るクセってのが大事だよ。mi prami do と do se prami mi は同じ意味。seってのはひっくり返すのさ。x_1とx_2を。
だから、mi se prami do と do prami mi は同じ意味。」
「ンだから、se prami は「x_2 は x_1 を愛する」とか「x_1 は x_2 に愛される」て意味。これもデアル句、アタリマエだな。人間逆立ちしても人間さ。
lo se prami ku はどうなると思う? se prami の x_1 は prami の x_2 だ。」
「別に難しくネエよ。逆立ちしたら下が空になるだろ?おんなじことだよ。ひっくり返したら、x_2がx_1になるンだよ。
オメは逆立ちできないのか、もったいねえなあ。楽しいのにナア。ま、だから、lo se prami ku は「愛される者」だよ。分かるだろ?逆立ちしてんだ。」
「デアル句はすげえぞ、色んな逆立ちができるンだから。seを使うとx_1とx_2をひっくり返しただろ?
teを使うとx_1とx_3を、veを使うとx_1とx_4を、xeを使うとx_1とx_5をひっくり返すんだ。ズルいよナア、オレも酒ばっか呑んでる場合じゃねえナア。」
「オレな、若いころはこんな酔いどれジャアなかったんだぜ。オメよりももっと士気に溢れてた、エハハ。ギター持ってなァ、色んなとこ行って、弾いて、歌ったモンよ。懐かしいなァ。
オメを見てると、そんなことを思い出すんだ。そんで、オレが今、若者だったラ、多分オマエみたいだったろうナアって。」
「え?分かんねって?ウゥン、たとえば、sanga「x_1 は x_2 (音楽)を x_3 (聴衆)に歌う/詠唱する」があるだろ?
lo sanga ku は「歌う人」だわな。lo se sanga ku は「歌われる音楽」、lo te sanga ku は「歌を聴く人」だよ」
「se sangaのx_1は sanga の x_2 だろ?ダカラ、lo se sanga ku はまるで、sangaのx_2なモノコト句になンだ。まんまだろ?
逆立ちしたときの下は、元のときの上ってコトだよ。オメは賢いから、チョット考えれば分かるよ。もっと自信もちな…zZ」
いつものように、おっちゃんは寝てしまった。相変わらず饒舌だった。今日は少し飲み過ぎたようで、瞼がすごく重たい。
ちらと店長のほうを見ると、薄く笑っていた。「この人、だいぶアンタのことを気に入ってるみたいだね。あんまり喋んないんだよ、実は」と店長が笑った。
驚いた。まさか、と返す他なかったが、店長が冗談を言っているようにも見えなかったし、おそらく本当なんだろう。
おっちゃんに話しかけられたのは本当にたまたま席が隣になっただけだったし、誰にでもよく話しかけるんだと思っていたが。ますます謎だ。とりあえず眠たいので、少し眠ろう。
「おう、オメ。起きな。もう閉まるぜ。おいったら。オメが寝ちまうなんて珍しいナア。いっつも、こっそり帰るだろ?
ヘヘ、いいや、いつもお金置いていくもんな。今日はツイてる。やっとオメに奢ってやれるよ。店長、「ゴイッショ」で。ヘヘ、滅多に言えねえナア。」
「どうせなら、シメにラーメンでも食いに行こう。いつもオレがいる場所に、オメがいるってダケさ。マア、付き合ってくれ。寂しいおっさんなンだ、オレは。アハハ。」
「オウ、青年。今日は呑まずに待ってたよ。メールなんて滅多に使わないからコッ恥ずかしかったが、便利には勝てないな。
さあ、入ろう。今日はゆっくり飲もう。」
…(続く)
published : 2014-01-19
revised :