5. ロジバンの基礎

sor1
………

sor5
え、ここにきて「ロジバンの基礎」?

sev1
「New Game」をやり遂げた人にだからこそできる話があるんだよ。
実際、「文の基本構造」は、最低限ロジバンを使うためだけのことしか言ってない。
もう少しきちんとロジバンを理解するためには説明が必要なところがあるんだよ。

もう一度、「New Game」の「文の基本構造」をおさらいしていこう。

平叙文ふたたび

sor1
えっと、まず最初は、

平叙文というのは、要するに「何が (何を) (何に) (何へ) どうする/どうであるか」を表す文のことだ。

ってのをやったね。それで、

文というのは、「何」を表す部分()と、「どうする」を表す部分(述語)からなる。

って感じでしたね。

sev5
うん、これは特に補足するところもないね。

ふだん、私たちは言語を使って、

しているわけだ。たとえば順にこんな感じ。

で、こういうことに使われる文というのは2つの要素からなるわけだね。
一つはその文の主旨を表す部分(述語)で、もう一つは「登場人物」を表す部分(項)。

sor2
うん。この前やった通りだね。で、この後にロジバンでの平叙文の作り方を習ったよ。

ロジバンでは、述語として使える語句の意味は「x1, x2, x3 はどうである/どうする」という形式で定義されている。

sev1
この「穴あき文」形式の定義は書きやすいし、直観的に分かりやすいからよく使われるのだけど、いくつか注意が必要。

「穴あき文」は日本語で書かれてるわけだから、日本語の影響を受けた表現になってしまってるわけだ。

sor1
というと…。ロジバンは時制とか相とか態とか必須じゃないけど、日本語だとそうはいかないから…みたいな?

sev2
そうだね。その「穴あき文」形式で表現されているロジバンの単語は、実際はもっと洗練/漂白された意味かもしれないってことを肝に銘じてて。

どんな関係がどんなものを取り結んでいるのか」という素朴な意味がロジバン単語の本質なわけ。

もう少し詳しい話をすると……、していい?

sor5
うーん。どうぞ。

sev1
ありがとう。

さっき言ったように、平叙文を使って私たちはふだん「どんな出来事/性質/関係があるか」を述べてるわけだ。

それで、この世界にある様々な出来事、性質、関係っていうのは大体パターン化されてるんだよね。
たとえば、「売買」という出来事には「売り手」「買い手」「商品」「対価」という存在が関わってくるじゃん。

そんな感じで、ある種類の出来事/性質/関係には大体決まった「登場人物」が出てくる

そこで、よく出てくる「登場人物」について簡単に言えるように、単語それぞれで独自に席を用意してある。
それが「穴あき文」形式でいうところの「x1, x2, x3,…」にあたる。

この「登場人物」たちと、表したい出来事/性質/関係を一度に書き切ろうとする形式が「穴あき文」形式といえる。

sor1
なるほどね。で、あまり出てこない「登場人物」を登場させたいときは、タグを使えばいいわけね。

sev2
そう。それから、あまりに多くの出来事/性質/関係に共通な「登場人物」、たとえば「時間」「場所」とかは、
共通の方法で席を用意したほうが簡潔だし分かりやすいしで、タグの方法にしてるって考えてもいいかもね。

で、席って言ったけど、別に全部埋める必要はなくて、私たちは言いたいことだけ言えばいい
言ってないことについては文脈とか常識を頼りにして適当に補完してもらえばいいし、たいていの人間ならそれができる。

ロジバンのモットーは「全て言わなくても通じるだろう」。「最小限の記述は最大限の解釈の余地を秘めている」のだ。

sor2
「最小限の記述は最大限の解釈の余地を秘めている」か。

tanruも、時制も、相も、zo’eも。確かにロジバンはそんな感じのキャラだったね。

話題

sev1
さっき、「「穴あき文」は日本語で書かれてるわけだから、日本語の影響を受けた表現になってしまってる」って言ったよね。

sor1
うん、言ってた。

sev5
その一つでもあるのだけど、ロジバンの『素朴な』平叙文は厳密には話題を提示しません

さっき見た通り、ロジバンの素朴な平叙文は「どんな関係/性質/出来事があった」ってことを言うだけだからね。
あるものを明示的に話題に取り上げて、それについて「どんな関係/性質/出来事があった」とは言ってないわけ。

でも日本語だと、そういう「素朴な」表現はたいてい違和感があるので、「穴あき文」形式の定義の多くは、あえて話題付き平叙文で書かれてる。

sor2
もしかして:「は」

sev2
そう。英語だと典型的には主語が話題でもあるように、日本語だと「は」の付いた語が話題として振る舞う。

「象は鼻が長い」とかね。これは話題「象」について「鼻が長い」という情報を与えてる。

「穴あき文」の x1 は話題とは限らない ってことを理解しておくこと。

sor1
なるほど。じゃあロジバンで、話題を示すときはどうすればいいの?

sev5
「ニューゲーム」の最後の方で {zo’u} についてやったと思うんだけど、実はzo’uは話題マーカーを兼ねている

zo’uより前に置いた項はその文の話題とみなされます

zo’u
話題部終了。話題部には、タグのありなし問わず、項をいくつも置ける。
xanto
x1 は x2 (種類)のゾウ科動物
nazbi
x1 は x2 (生体)・ x3 (鼻腔)の鼻
clani
x1 は x2 (次元/方向)・ x3 (照合枠)において長い

sev1
とはいえ、使うときは使うけど、いまのロジバンユーザーはあまり話題を明示しないね。

それはもしかしたら「穴あき文」形式定義に惑わされてるからかもしれないし、単に「最小限の記述」を魅力的だと思ってるからかもしれない。

sor2
ああ、話題が明示されてなかったら、それはそれでやっぱり話題について適当に補完してもらうってことになるわけね。

やっぱり「最小限の記述は最大限の解釈の余地を秘めている」に落ち着くわけだ。


○×問題

  1. いわゆる「穴あき文」形式の定義は完全忠実にそのロジバン単語の語義を捉えている。
  2. いわゆる「穴あき文」形式の定義を見る際は、その言語の「クセ」について十分考慮する必要がある。
  3. 多くの言語で、主語は話題でもあるが、ロジバンについても同様である。
  4. ロジバンで話題を明示するときは zo'u を用いる。

-/-問正解!


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