22. 引用
今回は引用とその周辺の語についてやっていきたいと思います。ロジバンにも直接引用と間接引用があります。
ちなみにソラはそれぞれどんな感じの引用の仕方か分かってる、よね?
直接引用は「」とか” “みたいな引用符を使って、表現をそのまま引用する方法で、間接引用は引用したい表現の内容を要約して、話者の言葉で述べるやり方、かな?
そんな感じだね。今回は直接引用、間接引用のやり方を見ていって、それから引用にまつわる語を見ていくことにするよ。
直接引用
さて、まずは直接引用から。ロジバンには引用符に相当する機能語があります。要は、引用開始語と引用終了語(引用の終止詞)だね。文法の仕様上、引用する表現によって、使う引用語が変わってきます。大きく3つに分かれるよ。
- ロジバンの文法的な表現(文、句、語)
- ロジバンの非文法的な表現(文や句の中途半端な引用、本来あり得ない単語列)
- 非ロジバンの表現(日本語、英語といった他の言語から、URLまで)
まずは1つ目。ロジバンの文法的な表現を直接引用するためには、lu と li’u で囲みます。
- lu
- 引用開始 : ロジバンの文法的な表現を引用する
- li'u
- lu の終止詞。ほぼ確実に省略できない珍しい終止詞
- do cusku lu mi prami do li’u mi
- 君は僕に{mi prami do}(私はあなたを愛している)と言った。
- mi tcidu lu lo mu plise li’u le liste
- 私は {lo mu plise}(りんご5つ)をそのリストから読んだ。
- cusku
- x1 (者)は x2 (内容)を x3 (聴衆)に x4 (媒体)で表す/言う/表現する
- tcidu
- x1 は x2 (文字列)を x3 (表面/書物)から読む
- liste
- x1 は x2 (集合)を x3 (序列)で x4 (媒体)に表した目録/カタログ/リスト/一覧/名簿/ログ
まあ使い方は分かるんだけど…文法的な表現ってどんなのがあるの?
基本的には、文や質問への応答として使われる表現のことだと思ってくれれば大丈夫。なので、述なれ語やtanruは大丈夫です。あと、1個以上の項様体(sumti、タグ付きsumti、タグ ku)や関係節句、縛位句(be 項 bei 項 …)、数詞も大丈夫です。
…まあ、無理して覚えなくてもいいよ。ひとまず、文や項(項様体)は lu .. li’u で引用できる とだけ覚えててください!
了解っす。
次は2つ目。ロジバンの非文法的な表現を直接引用するためには、lo’u と le’u で囲みます。
- lo'u
- 引用開始 : ロジバンの非文法的な表現を引用する
- le'u
- lo'u の終止詞。ほぼ確実に省略できない珍しい終止詞
- le nixli cu ciska lo’u pa le pu .kocon. lo be noi ci py. le’u
- その少女は {pa le pu .kocon. lo be noi ci py.} と書く。
- ciska
- x1 は x2 (文字列)を x3 (媒体)に x4 (道具)で書く
ほんっとにぐっちゃぐちゃだね…。{py.}ってなんだっけ…。あ、最初にやったアルファベット “p” のことか。
だね。念のため言っておくと、母音のアルファベットは「母音 + bu」で、子音のアルファベットは「子音 + y.」です。
非文法的な表現というのは、きちんと言うと任意の単語列からなる表現のことです。なので、文法的な表現を lo’u .. le’u で囲んでも文法的には合っています。でもみんなきちんと使い分けてるので、ソラも使い分けてね。
はーい。lu を使えば、文法的だから、何か意味をなしているかもって印にもなるもんね。
そうそう、そういう気遣いが大事!
それから、ロジバンの単語、つまり名称語(cmene)、内容語(brivla)、機能語(cmavo)を1語だけ引用する語があります。
- zo
- 1語引用:ロジバンの1単語の頭に付いてそれを文字列として扱う。
- mi se cmene zo .kocon.
- 私は{.kocon.}(コション)という名前です。
- zo pu cu cmavo
- {pu}は機能語だ。
- cmene
- x1 (文字列)は x2 の、 x3 (者)による名称; x2 は x1 と呼ばれている
- cmavo
- x1 (文字列)は x2 (品詞)・ x3 (意味/機能)・ x4 (言語)の機能語
zo は1語しか引用しないって決まってるから、終止詞がないんだね。
その通り。
注意すべきは、{puzi} みたいに、機能語をスペース無しで書いてあるものについて。これも語としては{pu}と{zi}の2語だから、{zo puzi}とすると、pu だけが引用されることになります。
そして最後ですが、非ロジバン表現の引用。これは少し特殊で、次のような構造で表します。
X は任意のロジバンの単語です。
- zoi
- 非ロジバン表現の引用を開始する。引用の範囲は何らかの境界子で示されている必要がある
ふむふむ。zoiって言ってから、引用したい表現を何らかのロジバンの単語で挟む んだね。任意ってのは本当になんでもいいの?
Xに使う語は、その引用に対するヒントとなるようなものを使うことが多い ね。
日本語なら{zoi ponjo ~~~ ponjo}とか、ponjo の p をとって、{zoi py. ~~~ py.}とか。英語なら {zoi glico ~~~ glico} とか、{zoi gy. ~~~ gy.} とか。他にも、URLだったら {zoi .url. ~~~ .url.}、さらにyoutubeだったら {zoi .iutub. ~~~ .iutub.} などなど色々あります。
一番無難なのは、この挟む語にも zoi を使って {zoi zoi ~~~ zoi} とする方法かな。迷ったら、「ぞい、ぞい、ほにゃ、ぞい」!
「ぞいぞいほにゃぞい」!
- ponjo
- x1 は x2 (性質面)に関して日本/ジャポニカ系(言語/文化/民族)
- glico
- x1 は x2 (性質面)に関して英語系(言語/文化/民族/地理)
- do cusku zoi py. 私はあなたが大好き! py. mi
- あなたは「私はあなたが大好き!」と私に言った。
間接引用
さて、直接引用を色々とやってきたところで、間接引用をやりたいと思います。が、こっちはそんな長くなりません。
- du'u
- 抽象詞:後ろに文をとって、「x1 は x2(文字列)によって表される[文]という命題」という述なれ語になる
あれ?これ、やらなかったっけ?
そう、やったよね。10章の『抽象節』で。あのときは du’u にPSがあることを教えていませんでした。
間接引用では、du’u の x2 を利用します。つまり、{lo se du’u [文] kei}([文]という命題を表すような文字列)の形が間接引用の形です!
- do cusku lo se du’u mi prami do kei mi
- あなたは、私(=話者)があなたを愛していると(いう旨を)私に言った。
ほー。du’u にこんな使い方があったとはなあ。
ここからは、引用っぽいものと引用の応用についてやっていきたいと思います。
引用っぽいもの、というのは、以前に言ったもしくは以降に言うロジバン文を指示する代項詞 のことです。
- da'u
- 代項詞:以前言ったこと
- de'u
- 代項詞:さきほど言ったこと
- di'u
- 代項詞:直前に言ったこと
- dei
- 代項詞:ただいま言っていること
- di'e
- 代項詞:次に言うこと
- de'e
- 代項詞:まもなく言うこと
- da'e
- 代項詞:後ほど言うこと
一応、このシリーズの語をすべて出したけれど、特によく使う大事なのは di’u と di’e かな。とりあえずこの2つだけは覚えよう。
- .i ra catra .i do cusku di’u mi
- 彼が殺した。あなたはそう(=「彼が殺した」)私に言った。
- do cusku di’e mi .i ra catra
- あなたは次のこと(=「彼が殺した」)を私に言った。彼が殺した、と。
なんかエッセイとか小説を書くときには重宝しそうだね。
ラストスパート! 引用の応用編です。
引用句は文字列を表すわけだけど、その文字列から、それが指示する対象を引き出す ということをやってみよう。
- la'e
- 限定詞:項(sumti)の頭について、「その項(sumti)の指示対象の指示対象」を引き出す。ほとんどの場合、文字列を表す項に使われる。
- .e’u mi’o zgana la’e zoi py. となりのトトロ py.
- 映画『となりのトトロ』(=文字列「となりのトトロ」が指示するもの)を見ましょう。
- .i le ninmu cu cisma .i mi gleki la’e di’u
- あの女性が微笑んだ。私はそのこと(=文字列「あの女性が微笑んだ」が指示すること)が嬉しい。
- zgana
- x1 は x2 (対象)を x3 (方法)・ x4 (条件)で観察/観賞/鑑賞する
- cisma
- x1 はほほえむ/にやつく
- gleki
- x1 は x2 (事)に関して嬉しい/幸せ/幸福/上機嫌
ふむふむ。項 {zoi py. となりのトトロ py.}の指示対象は、「となりのトトロ」っていう文字列で、その「となりのトトロ」の指示対象(多分、映画かな?)を引き出すのが la’e の役目ってわけね。
そう。「指示するものが指示するもの」と2段階の指示が行われるので、la’e は間接的指示とも呼ばれます。
文法上はどんな項の頭にもつけれるのだけど、文字列を表す項以外で使ってるのはあまり見ないね(なのでこの章でやりました)。
ふむ。でも、ちょっとくどいよね。「ラへ ゾイ X ほにゃ X」でしょ。もう少し簡単に日本語とか英語を使えるようにできないかな。
ふむふむ。実は、ちょうど {la’e zoi} の代わりになる {la’o} という機能語もあるのです。
- la'o
- 非ロジバンな名称の冠詞。非ロジバンの部分は何らかの境界子で示されている必要がある
- .e’u mi’o zgana la’o py. となりのトトロ py.
- 映画『となりのトトロ』(=「となりのトトロ」という名のもの)を見ましょう。
ああ、これなら結構スッキリしていいかもね
でしょ?
la’e zoi は「それが指示するもの」で la’o は「そう呼ばれるもの」だから微妙な差異はあるけど、大体同じと考えていいよ。
例えば、URLはウェブページを指示するだろうけど、そのページの呼び名がURLなのかどうかと言われると微妙だよねって話です。
さて、今回もほとんど単語を紹介するだけの回になってしまいました…。その代わり、新しい内容語はそんなに出してないので、機能語の暗記をしっかりしてくれればと思います!
おっす。ゴールまであともう少しだもんね。ふんばるぞい!
覚えるばっかでツマラナイという人のために、自由課題を出しておきます!今までに覚えた単語を使って色々と考えてみよう。
- {fanva} を使って「”犬”は日本語からロジバンに翻訳すると”gerku”になる」を訳せ。
- “犬”をロジバンで何というかを尋ねる文を作れ。(ヒント: maを使うこと)
- 1.の「”犬”」や「日本語」、「”gerku”」の部分を変えて色んな表現を(7つ以上)作れ。
- fanva
- x1 は x2 (文字列)を x3 (言語)に x4 (言語)から翻訳し、 x5 (文字列)を生む
○×問題
- 文法の仕様上、ロジバンではロジバンの文法的な表現、非文法的な表現、非ロジバンの表現で引用語が異なる。
- lu の終止詞は lu'u である。
- lo'u の終止詞は le'u である。
- zo はロジバンの単語を1語なんでも引用できるので、複合的な機能語(例えば bazu)も引用可能である。
- la .soran. はソラ自身を指しているが、zo .soran. はソラではなくソラの名前を指している。
- 直前に言ったこと、次に言うことを指す代項詞はそれぞれ di'e と di'u である。
- 引用の項はそのような文字列を表すが、その文字列が指示するものを表現したいときは la'e を頭につける。
-/-問正解!