24. 代詞
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さて、今回も文章になると必要になってくる、代詞についてやります!
代詞というのは、ふつうの言語でいうところの代名詞とか代動詞のことです。
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まずは、人称代項と直接指示代項についてやります。ま、もうソラはほとんど知ってると思うけどね。
- mi
 - 人称代項:話者(聴者とその他以外)「私」
 - mi'o
 - 人称代項:話者と聴者(その他以外)「私たち」
 - mi'a
 - 人称代項:話者とその他(聴者以外)「私たち」
 - ma'a
 - 人称代項:話者と聴者とその他「私たち」
 - do
 - 人称代項:聴者(話者とその他以外)「あなた」「あなたたち」
 - do'o
 - 人称代項:聴者とその他(話者以外)「あなたたち」
 
- ti
 - 直接指示代項:話者の近くにあるもの。「これ(ら)」
 - ta
 - 直接指示代項:聴者の近くにあるもの。「それ(ら)」
 - tu
 - 直接指示代項:話者から離れたところにあるもの。「あれ(ら)」
 
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mi, mi’o, do と ti, ta, tu はもう既に出てきてたよね。
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だね。日本語だと「私たち」「あなたたち」でしかない区別が、ロジバンではより明確に言い表せます。
直接指示については、名のごとく指差しできるようなものにしか使えません。
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「指差しできるものだけ」ってことは、英語の”he”とか”she”とか”it”にあたる語はまた別にあるんだよね?…って ra だった。
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そうだね。「それ(it)」が直接指示語と違うのは、文章・会話の中で出てきた語と同じ対象を指示する という点です。こういう、テキストの別のところで出てきたものを指していることを照応と言います。
- ri
 - 照応代項:直前の項(sumti)を繰り返す。
 - ra
 - 照応代項:いくらか前の項(sumti)を繰り返す。
 - ru
 - 照応代項:ずっと前の項(sumti)を繰り返す。
 
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ra と ru と違って、ri は「直前の項」と、厳密に何を指すかが決められているので、そのためのルールもあります。
- 完全な項のみを指す。つまり、自身を含む項(まだ項として完成していないもの)は参照しない。
 - 基本的に他の代詞(mi, do, ke’a…)は参照しない(その代詞を繰り返せばいいため)。
 - ただし、同一の発話内で1回ごとに指示が変わりうる{ti} {ta} {tu} {ma} {zo’e}などは参照できる。
 
- mi cirko lo mapku .i ri crino
    
- 私は帽子を失くした。それ(= lo mapku)は緑色だ。
 
 - le ninmu cu certu lo nu sanga .i ri trina mi .i ra kakne lo nu dansu
    
- その女性は歌うのが上手い。それ(= lo nu sanga)は私を魅了する。それ(= le ninmu)は踊れる。
 
 
- cirko
 - x1 は x2 (物/者)を x3 (所)で失う; x1 は x2 (性質)を x3 (状況)で失う
 - mapku
 - x1 は x2 (素材)の帽子/冠/兜/ヘルメット
 - bunre
 - x1 は茶色/黄褐色/小麦色
 - certu
 - x1 は x2 (事/行為)の、 x3 (基準)における玄人/達人/プロ/ベテラン
 - sanga
 - x1 は x2 (音楽)を x3 (聴衆)に歌う/詠唱する
 - trina
 - x1 は x2 を x3 (性質)で誘惑する; x1 は x2 にとって魅力的
 - kakne
 - x1 は x2 (事)が x3 (条件)においてできる
 - dansu
 - x1 は x2 (音楽/リズム)に合わせて踊る
 
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ふーむ。でも ra とか ru って、実際にどれを指してるのか分かんなくない?
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文脈だけでは分かりにくいかなと感じるときは、私は {ra noi ..} の形で使うよ。
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なるほどね。
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次はあんまり使わないけど覚えておくと役に立つ再帰代項です。主文の項を指す よ。
- vo'a
 - 再帰代項:主文のx1の項(と同じ対象)を指す。
 - vo'e
 - 再帰代項:主文のx2の項(と同じ対象)を指す。
 - vo'i
 - 再帰代項:主文のx3の項(と同じ対象)を指す。
 - vo'o
 - 再帰代項:主文のx4の項(と同じ対象)を指す。
 - vo'u
 - 再帰代項:主文のx5の項(と同じ対象)を指す。
 
- mi cusku lo se du’u vo’a prami vo’i kei do
    
- 私はあなたに、私(vo’a)があなた(vo’i)を愛しているという旨を言う。
 
 - le ninmu cu nelci lo mamta be vo’a
    
- その女性は自分(vo’a)の母が好きだ。
 
 
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さて、一旦代項については置いといて…。次に、代述詞についてやります!ふつうは代bridiと呼ばれています。
次の語群は、文法的には述語ですが、意味的には照応している文の内容を表します。
一番よく使うのは go’i なので、とりあえず go’i は絶対覚えよう!
- go'i
 - 照応代bridi:直前の文の内容を繰り返す。
 - go'e
 - 照応代bridi:2つ前の文の内容を繰り返す。
 - go'a
 - 照応代bridi:さきほどの文の内容を繰り返す。通常は2つよりも前。
 - go'u
 - 照応代bridi:以前の文の内容を繰り返す。
 - go'o
 - 照応代bridi:のちほどの文の内容を繰り返す。通常は次の文。
 - nei
 - 照応代bridi:現在の発話における文の内容を繰り返す。
 - no'a
 - 照応代bridi:1つ上の階層の文の内容を繰り返す。
 
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go’i は xu の質問の答えとして使えるって話を前にしたよね。
「文法的には述語」…っていうことは、冠詞(lo/le)をつけたりできるってこと?
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その通り!これらの語の特徴をまとめてみるね。
- 項を置くことで、参照した文を上書きした形を繰り返す。
 - {ja’a}をつけると、参照した文の肯定形を繰り返す。
 - {na}をつけると、参照した文の否定形を繰り返す。
 - 冠詞(lo/le)をつけられる。{lo go’i}は、参照した文のx1の項に等しい。転換することでx2以降も表せる。
 
- .i xu do ca bartu lo gusta ― .i go’i
    
- あなたは今、レストランの外ですか? ― その通りです。
 
 - .i la .xekir. cu jbena fo lo berti .i la .sanit. cu go’i fo lo snanu
    
- ヘキルは北の方で生まれた。サニットは南の方で生まれた。
 
 - .i do prami mi .i mi gleki lo nu go’i
    
- 君が私を愛している。私はそのことが嬉しい。
 
 - .i le skami cu spofu .i mi ze’u pilno lo go’i
    
- あのコンピュータが故障している。私は長い間、それ(= le skami)を使っている。
 
 - .i ti pixra .i lo se go’i cu tcati .i lo te go’e cu me la .xekir.
    
- これは絵だ。絵の主題は紅茶である。絵の作者はヘキルだ。
 
 
- bartu
 - x1 は x2 の外/外部/外側
 - jbena
 - x1 は x2 (産主)による x3 (日時)・ x4 (所)の生まれである
 - berti
 - x1 は x2 にたいして x3 (照合枠)で北方/北側
 - snanu
 - x1 は x2 に対して x3 (照合枠)における南方/南側
 - skami
 - x1 は x2 (目的/機能)のコンピュータ
 - spofu
 - x1 は x2 (機能)に関して故障している/使用不可能
 - pixra
 - x1 は x2 (主題)・ x3 (作者)・ x4 (媒体)の絵/画/写真/造形
 - tcati
 - x1 は x2 (葉/原料)の茶/紅茶/緑茶
 
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ほうほう。ri だと遠いし、ra だと曖昧なときに、冠詞付き go’i とかは使えるね。
私的には、これらの語は「述語」を繰り返して、項が埋められてない部分は前のを継承する…と考えたほうが理解しやすいかも。
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その解釈でもいいと思うよ。
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さて、ここで、割り当て代項/代述詞(代bridi)についてやりたいと思います。
これは日本語でいうところの「甲乙丙丁戊…」に相当するものです。プログラミングの変数みたいなものだね。
- goi
 - 項割り当て:直前の項を直後にくる割り当て代項に割り当てる/代入する。
 - ko'V
 - (V=a,e,i,o,u) 割り当て代項
 - fo'V
 - (V=a,e,i,o,u) 割り当て代項その2。ふつうはko'Vを使い切ってから使う。
 - cei
 - 述語割り当て:直前の述語を直後にくる割り当て代述詞に割り当てる/代入する。
 - brodV
 - (V=a,e,i,o,u) 割り当て代述詞
 
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broda系も、go’i系と同様、文法上は述語だけれど、意味的には文の内容を割り当てられます。なので、さっきやった go’i系の規則がそのままbroda系にも当てはまります。要チェック!
- .i la .alis. goi ko’a cu nelci la .uank. goi ko’e .i ko’a nanla .i ko’e mlatu
    
- アリス(以下 ko’a)はワンク(以下 ko’e)が好きだ。ko’aは少年である。ko’eは猫である。
 
 - .i mi prami cei broda do .i broda .i broda .i broda .i broda
    
- 私はあなたを愛する(以下 broda)。愛している。愛している。愛している。愛している。
 
 
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コワイコワイコワイ……いや、てか、愛の言葉を broda で済ますなよ!
まあ確かに、法律文書とか、長編小説とか、特許文書?とかなら使えそうだね。あんまり会話には使えなさそうだけど…。
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たとえば、ロジバンのwikipediaのリンゴ(plise)の記事(https://jbo.wikipedia.org/wiki/plise)を見てみると、
- ni’o lo plise goi ko’a cu grute be lo plise tricu be lo tricrosace .i ko’a cu me lo traji se sombo grute
    
- リンゴ(以下ko’a)は Rosaceae科の樹木の果物である。ko’a は最も植えられた果物の一つである。
 
 
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と、キーワードとなる語に ko’a を割り当てることで、文が短くなるようにしてあったりするよ。
あ、ちなみにロジバンのwikipediaはまだまだ記事は少ない(し、少し文法ミスも見られる)けど、ロジバンのいい教材になるかも。
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なるほどね。エッセイとか書くときに使ってみよう。
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また、ko’a や broda は、文法について議論しているときの例文で、テキトーな項・述語の代わりによく使われます。
「tanru は {broda brode} の形だ」とか「{lo broda} は項として使える」とか
「{ko’a .e ko’e broda} は {ko’a broda .ije ko’e broda}と同じだ」とかね。
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最後に、代詞、代述詞ではないけれど、そんな感じで使える語についてやります。
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あ、アバウト…
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うるせえ。描写sumti(lo/le 述なれ語)や名前(cmene)を参照するときに、その述なれ語の頭文字を代わりに使う風習があります。
あ、そもそも、アルファベットはそのままで項として使える んです。
- .i la .alis. cu cmalu .ije lo kumfa be .abu cu jarki
    
- アリスは小さく、a(= la .alis.)の部屋は狭い。
 
 - .i lo nanmu cu vreta lo bitmu .i ny. catlu lo tsani .i ty. grusi
    
- 男が壁にもたれかかっている。n(= lo nanmu)は空を見つめている。t(= lo tsani)は灰色だ。
 
 
- cmalu
 - x1 は x2 (性質)に関して、 x3 (比較対象)の中で小さい
 - kumfa
 - x1 は x2 (構造)内の x3 (壁/天井/床)で仕切られた部屋/室
 - jarki
 - x1 は x2 (次元)・ x3 (基準)において狭い
 - vreta
 - x1 は x2 に寄り掛かる/もたれる/横たわる
 - bitmu
 - x1 は x2 ・ x3 を隔てる、 x4 (構造体)の壁/垣/塀/フェンス
 - tsani
 - x1 は x2 (所)の空/天空
 
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あー、これいいね。これ使えそうだわ。
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お気に召してくれたようで何より。
あともう一つは、zo’e の述なれ語版です。つまり、文脈上明らかな内容だったり、重要でない内容のときに使います。以心伝心で伝わる仲なら、これだけで会話できるかもかもしれないっ。
- co'e
 - 省略述なれ語:文脈上明らかであったり、重要でなかったり、明示したくないときに使う。「アレだ」「云々だ」
 
- lo moklu be do cu co’e
    
- 君の口はアレだ。
 
 - .i mi klama lo gusta .i .e’u co’e
    
- 私はレストランに行きます。どうです。
 
 
- moklu
 - x1 は x2 (本体)の口
 - gusta
 - x1 は x2 (飲み物/食べ物)を x3 (客)に提供する飲食店/レストラン/カフェテリア
 
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あーこれもいいね!阿吽の呼吸ならぬ、「co’e co’e の呼吸」だね?
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……????
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しょへ
○×問題
- mi'o と mi'a は共に人称代項であり、それぞれ「私とあなた」「私と第三者」という意味である。
 - ri, ra, ru は照応代項といい、以前に出てきた項それ自体(つまり文字列)を指示する。
 - go'i は di'u と異なり、直前の文の内容を繰り返す。
 - lo se go'i は直前の文の x2 の項と同じ対象を指示する。
 - ko'a や fo'a は割り当て代項とよばれ、cei によって割り当てられる。
 - co'e は zo'e の文バージョンである。
 - アルファベットを代項として使うことができる。
 
-/-問正解!