3. 言文一致
にしても、さっきのアレすごかったね。
…ああ、そうだ。今までは単語を空白で区切ってたと思うんだけど、
単語のアクセントさえ明示すれば、ロジバンでは空白無しでも完全に構文解析ができるよう になってます。
ilmentufaで{.o’imuXAGjisofyBAKnicuZVAtilePURdi}って入力してみて。
(o’i [{<mu BOI> <xagji sofybakni> KU} cu] [zvati {le purdi KU} VAU])
語彙力やばくない…? ロジバンなんかしてる場合じゃないんじゃ…。
うるさいな。私の語い力はともかくとして、なんであんな技がロジバンにはできるの?
(「彙」さえも・・・) んー、じゃあ文法とは離れるけど、ロジバンのコンセプトを今回は少し話そうかな。
「ニューゲーム - 6. tanru」 で、ロジバンは構文厳密だってコションさんが言ってたの覚えてる?
あー言ってたね。そのおかげで、tanru の修飾構造が必ず一意に定まるって話だったよね。
そう。まずそれがロジバンの大きな特徴の一つ。
ロジバンは構文厳密だから、構文解析器(パーサ)が作りやすいんだね。さっきのilmentufa とか。
あー、さっきは流しちゃったけど、そもそもパーサがあるってのが何気にすごいことなのか。
日本語だと意図された修飾構造を捉えるには、語の意味のつながりとかも見ないと上手くいかないときとかあるからね。
それで、ロジバンにはあともう一つ大きな特徴がある。それは 言文一致。
もう少しきちんと言うと、「声に出したロジバン表現が一意に筆記で転写できること(逆も然り)」。
日本語も平仮名で書けば(助詞の「は」はあるけど)言文一致だよね。そんな大した特徴だとは…。
んー、まあ言文一致と言われるとそうなるよね。ロジバンの「言文一致」はもう一つ推し進めたものなのだよ。
ロジバンの言文一致とは「単語の切れ目も分かるようにする」ということも意味します。
あーなんか小学校のころ流行ったよね。「ぱんつくった」とか。「パン作った」と「パンツ食った」。
日本語だと平仮名で書いた文の中には確かに単語の切れ目がわからないようなのあるね。
そう。「くるまでまとう」(「車で待とう」「来るまで待とう」)とかもね。
まあ日本語の場合、言→文についてはイントネーションを考慮すると大丈夫だろうけど、
文→言になると平仮名文をちゃんと復元するのは(文脈無しでは)厳しいときがあるだろうね。
日本語は、漢字を使うことが分かち書きの役割も担ってるといえるね。
で、ロジバンは各単語の形態にあれこれ条件をつけることで「言文一致」を実現してる。つまり、(アクセントを含めて)「ここからここまでが一単語」というのが明確に分かるようにロジバンの単語はできている。
これは結局、「アクセントも記せば全ての単語を分かち書きしなくてもいい」ってことになるわけだ。
ああ、声に出すときは単語をわざわざ区切りながら読んだりしないもんね。だからあんな書き方でもちゃんと構文解析ができるのか。
そういうこと。逆に、だからこそ、「言文一致」のための制約もあるわけだ。特にピリオドはそのためにある:
- cmene の最初と最後にはピリオドを置く
- 母音で始まる単語の最初にはピリオドを置く
- 曖昧母音で終わる単語の終わりにはピリオドを置く
これらは全て単語の切れ目を明確にするためのルールなわけだね。
もちろん、単語の形態論も「言文一致」のための制約と言えるね。
あー、だから {.abu} とか {py.} とか {.y’y.} の単語にはピリオドがつくんだ。コションの言ってた「オマジナイ」ってのはこのことだったか。
でも、なんかロジバンで造語とか大変そうだね。そういう条件をクリアしないといけないんでしょ?
まあそういうことになるね。でもどんなものがダメかというのがはっきりしてるから、造語のための支援ツールなども開発されてる。それを使えば、その辺りの処理は自動でやってくれるよ。ロジバンの辞書データベースでも、ダメな単語を登録しようとするとちゃんと反応するし、まあその辺りは技術さまさまって感じだね。
なんというか、科学技術の恩恵をたくさん受けて育ったんだね。
そしてこれからも育っていく。
ま、その辺りの制約が不自由だと感じることもあるかもしれないけど、福沢諭吉も「自由在不自由中」って言ってるわけだし。
「自由は不自由の中にある」か。なんか言いくるめられたような気もするけど、なるほど…。